税務情報 経営

中小企業の役員報酬の設定方法

投稿日:2019年1月14日 更新日:

 他の会社の社長さんが毎月いくら役員報酬を貰っているか聞いたことはありますか?一般的には聞いたことはないと思います。
 税理士という仕事をやっていると様々な会社で役員報酬の設定についてご相談を受けます。
 そこで、今回は中小企業の役員報酬の設定方法について現役税理士がお話ししたいと思います。

1.税務上の役員報酬の要件

 役員報酬は一定の方法で支払わないと損金(費用)にならないという税務上のルールがあります。
 たとえば、今期は利益が出たからといって社長に賞与を出した場合や、今期は赤字が出そうだから社長の報酬を下半期は減額した場合には、一部が損金にならなくなります。
 そのため、多くの中小企業では支払った役員報酬を全額損金とするため「定期同額給与」、つまり毎月同額の役員報酬という方法をとっていると思います。

2.役員報酬の決め方

① 同業他社と同じくらいに設定する

 この決め方は税務的にはなんらメリット、デメリットがある方法ではないのですが、多くのご相談者様が希望されることが多い決め方です。
 会社の規模、年商、社長の年齢などから同じような会社の社長と同じくらいの金額が貰えていれば安心という考え方でしょう。

② 個人の収入を優先する

 社長自身も個人で融資を受ける際や、お子様の進学などの際に、収入を外部に開示しなければならないことがあります。そういった場合、「いくら以上の収入がないと融資が受けられない」や、「いくら以上の収入があると保育園に入園できない」といったことが起こりえます。
 会社員であれば仕方がないのですが、中小企業の社長は役員報酬の金額を自分で設定することができるため、こういった事情に合わせて役員報酬の金額を決める方法があります。

③ 法人の利益を優先する

 役員報酬は会社にとって費用となりますから、役員報酬を増額すれば会社の利益は減額することとなります。そのため、今期の会社の売上や利益を見積もったうえで、理想とする利益になるように役員報酬を決める方法があります。

3.税理士として気にしていること

役員報酬の設定について現役の税理士として注意していることは2点です。

①法人税等の負担と、社長個人の税金負担を把握しているか?

 ご相談者様の多くが「とにかく法人税等を負担したくない」という考えから、役員報酬を多額に設定する傾向があります。
 なぜならば、法人税等は決算後にまとまった金額を納付することとなるため負担感が強いためです。一方、社長個人の所得税は源泉徴収して他の従業員と一緒に会社が納付することとなりますし、住民税や健康保険料は口座振替とすることや、月々分割払いすることができるため負担感が少ないのです。
 しかし、ほとんどの中小企業では、法人の利益にかかる法人税等の負担率よりも、社長自身の役員報酬にかかる税金、社会保険料の負担率のほうが大きいのです。 例えば、中小企業の利益にかかる法人税等については、年間800万円以下であれば約23%とされています。一方、社長の役員報酬については所得税が少なくとも約5%、住民税が約10%、健康保険料が約10%、あわせるとおおよそ25%の負担率となります。このような負担率を把握した上で判断しなければ本当の節税とは言えません。

②実際に役員報酬を払うことができるか?その金額で社長が生活できるのか?

 上記のとおり「とにかく法人税等を負担したくない」という考えから実際には払うことのできない金額を役員報酬として設定する会社もあります。
 この場合、毎期未払いの役員報酬が、「社長借入金」として法人の負債(債務)に計上されます。 「社長借入金」はいずれ解消できるくらいの少額であれば問題ありませんが、積もり積もって何億という金額になった場合、社長の相続の際に大変なことになってしまいます。
 一方、法人の利益を出すために役員報酬を過度に少額に設定してしまうことも考えられます。
 この場合、社長が役員報酬以外に法人から資金を持ち出してしまい、法人が社長にお金を貸し付ける「社長貸付金」が法人の資産に計上されます。 「社長貸付金」がある場合、税務上は認定利息を計上しなければなりません。つまり、法人が無利息でお金を貸し付けることはあり得ないため、相手が社長であっても利息を計上しなければなりません。
 また、銀行の融資を受ける場合にも「社長貸付金」があることは非常にマイナス評価となります。

4.まとめ

 役員報酬の設定については、資金繰りの問題や会社の将来的な展望など様々な要素から判断し決定しなければなりません。目先の節税ばかりを考えてしまい失敗しないよう、税理士としっかりと相談して決定するようにしましょう。

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